文中の中で、
[かっちゃあ]、
[本当はそうじゃないだろう]、
[君ぐらい冷たい人はいないね]、
[もう来そうもない]などどんな意味ですか?
どなたが教えていただければありがとうございます。
原文:
[お客の中で、だれがすきだい]
[だれがすきかしら]
[ぼくをすきかい]
[あなたがすきだわ]
[今度映画へでも行こう]
[映画へでも行きましょうか]
[いつにしよう]
答えられない時に信号は伝わって、マスターがとんでくる。
[お客さん、あんまりからかっちゃあ、いけませんよ]
といえば、たいていつじつまがあって、お客は苦笑いして話をやめる。
マスターはときどきしゃがんで、足の方のプラスチック管から酒を回収し、お客に飲ませた。
だが、お客が気が付かなかった。若いのにしっかりした子だ。ベタベタおせじを言わないし、飲んでも乱れない。そんなわけで、ますます人気が出て、立ち寄る者がふえていった。
そのなかに、一人の青年がいた。ボッコちゃんに熱を上げ、通いつめていたが、いつも、もう少しという感じで、恋心はかえって高まっていった。そのため、勘定がたまって支払に困り、とうとう家の金を持ちだそうとして、父親にこっぴどく怒られてしまったのだ。
[もう二度に行くな。この金で払ってこい。だが、これで終わりだぞ]
彼はその支払いにバーに来た。今晩で終わりと思って、自分でも飲んだし、お別れのしるしといって、ボッコちゃんにもたくさん飲ませた。
[もう来られないんだ]
[もう来られないの]
[かなしいかい]
[かなしいわ]
[本当はそうじゃないだろう]
[本当はそうじゃないの]
[君ぐらい冷たい人はいないね]
[あたしぐらい冷たい人はいないの]
[殺してやろうか]
[殺してちょうだい]
彼はポケットから薬の包みを出して、グラスに入れ、ボッコちゃんの前に押しやった。
[飲むかい]
[飲むわ]
彼の見つめている前で、ボッコちゃんは飲んだ。
彼は[勝手に死んだらいいさ]といい、[勝手に死ぬわ]の声を背に、マスターに金を渡して、外に出た。夜はふけていた。
マスターは青年がドアから出ると、残ったお客に声をかけた。
[これから、私がおごりますから、みなさん大いに飲んで下さい]
おごりますといっても、プラスチック管から出した酒を飲ませるお客が、もう来そうもないからだった。